218万円の絶望
南千住で焼魚専門店「ローストフィッシュ」を経営する黒もふもふの手元に残った最後のお金だった。店の家賃が30万円、社員1人で30万円、バイト3人で30万円、仕入れで30万円、その他出費で30万円、売上が100万円、赤字が…80万円。これに自分の生活費30万円を差っ引くと、月の赤字は110万円。
手元に残ったこの218万円がちょうど2ヶ月で無くなる計算になる。
黒もふもふは昨年秋から物件を探し続け、年末で閉店した居酒屋に運良く居抜きで入ることができた。1月に契約して2月をフリーレントにしてもらい、3月1日のオープンとともに新型コロナウイルスさんがご来店され、4月5月と店を自粛し、6月から再オープンをして、1ヶ月で110万円もの赤字を積み上げた。
個人の貯金はお店の開業で使ってしまった。
難しい話はともかく、この218万円でなんとか立て直さないと店が潰れるどころか自分は借金まみれで放り出されてしまう。人生があっけなく終わってしまうのだろうか。
カラッカラに乾いていた口にアイスコーヒーを含んだ。
もはや、なんの味もしない。7月なのに寒く冷房を切ろうとしたらもともと冷房なんてついていなかった。店が死へとカウントダウンを始めたことは、黒もふもふの正常な感覚さえも奪おうとしていた。
溺れる者は藁にもすがる勇気がなくもがく
今日は火曜日なのでお店は定休日だ。
このままではお店が潰れてしまうことはわかっていたが、開店前に立てた計画や黒もふもふの経験ではこのピンチを脱することが不可能なことはわかりきっていた。
新聞では、居酒屋の売上戻り率は52%だと報じていた。
自分以外の居酒屋経営者はどうしているのだろうか?
52%しか売り上げが戻っていないということは、48店舗が潰れてしまうのだろうか、そんなマイナス思考におちいった頭でハッと気が付いた。自分だけじゃなくみんな困ってるということは、調べれば何か解決方法があるのではないか。
Googleでの検索を続けた結果、ひとつの怪しい情報にたどり着いた。
「9週目:昼間の時間を活用するとしたら」
https://note.com/resdx/n/n566cfdfc775c
・客足はもどらないし、客席はソーシャルディスタンス
→でも家賃と人件費は前と同じぐらいかかる
→昼間営業でどうにかしよう
→テイクアウトやランチをやるも売上の1割しか確保できない
そりゃ、客足も戻っていない上にソーシャルディスタンスで満席数を1/3とかにしたら飲食店は生きていけませんよね。。
その通りだった。
そして、その生きていく方法としてランチ営業を最適化しようと書いてあるのだが、あいにくそこから先は有料の記事だった。
黒もふもふも長年生きてきたが、1記事の課金に3400円という金額を見たのは初めてだった。間違いなくぼったくりだ。怪しすぎる。
書いている筆者のアイコン猫だし、いや、猫なのは自分も同じか。
340円なら読んでみたいもんだが、さすがにこれは無理だ。
…でも正直な話お店を立て直せるなら3400円どころか34,000円でも34万円でも払える。でもやはり詐欺なのだろうか。
30分ほど課金するかしないか悩んだ結果、この筆者に問い合わせをしてみることにした。内容の前にこの人(ねこ)が信用できる人なのか少し連絡をとってみたくなったのだ。
手の先に感覚が戻ってきた気がする。一段落ついたからか朝から何も食べておらず自分が腹ペコリンだったことにも気が付いた。キッチンを探って冷やご飯を温め、しらすと焼きシャケでチャーハンを作った。
スプーンで口にほうばりながらパソコンを開くと、筆者のにゃんこ先生から返事が戻ってきていた
行動して経験すること
予想外だった。
「大丈夫ですよぜひご購入ください」
とでも書くのが普通なのではないか。
どうして自分にはオススメしてくれないのか。
図星だった。
この記事を買えば自分のお店が救われるような、読むだけで魔法のように売り上げが伸びてこのピンチを脱出できるような、そんな裏技を探していたのだ。
その代わり、4週間やらずに脱落したらあなたの負け。信用も店も失う呪いをかけておきます。ふふ。
1週目:「お客さん喜んでくれるかな」だけ考える
にゃんこ先生のいう通り、1週間ずつ4つの「普通のこと」を愚直にやり抜くことにした。
賭けに勝てば、お店を再建できるだけの「ものすごいノウハウ」がもらえる。
そもそも自分はそんなに頭がいい方ではない。
難しい方法論やテクニックを言われるより、1週間ずつ1つのことをやるのは自分に向いているような気がしていた。
考えてみれば、お店を始める前は美味しい料理を出すとか、喜んでもらえる仕掛けとか、ワクワクしながら計画していたもんだが、最近はお店を存続させることばかりを考えていた。
どうやったら喜んでくれるかな?って考えてくれる店
コストが120万円かかるから1日4万円売りたいと考えているお店
自分が客だったら、どっちのお店に行きたいかなんて考えるまでもない。
お店のコストを少しずつ負担してもらおうという考え自体が間違っていて、お店はシンプルにどうやったらお客さん喜んでくれるかな?だけ考えればいいはずだ。
お客さんに喜んでもらえるように、まずは入りやすい看板にした。
自分も経験があるのだが、看板から歓迎感が滲み出ていないと新しいお店に入るには勇気がいる。心から大歓迎だと大きな看板を店前に掲げて、毎日日替わりで日付とメッセージを添えるようにした。
また、お通しに前日の営業で余ってしまった「何か」をつけることにした。
元々は業務用の切り干し大根とか、業務用のひじきなんかを出していたのだが、どうせ客数も少ないし、正直な話、自分が飲みにいった時に業務用の切り干し大根だとがっかりするし、逆に豪華なお通しだと気分がよかった。
時には豚バラの煮込みを、時には漬けにして揚げられた刺身を、時には野菜のピクルスを。どうせ余ったものなのだから美味しく食べてもらえるだけでもいいと思った。
スタッフにも1人ずつに、ことあるごとに話かけた。
スタッフもこの数ヶ月どう動いていいかわからなかったようで、基準がわかりやすくなったことで見違えるようにスムーズに動くようになった。
前はお客さんが1組しかいない時に店頭でビラまきをしていたスタッフが、店内でお客さんと楽しそうに会話をしていた。
あとで聞いたら自分がビラを撒いてもお客さんは喜んでくれないかなと思ったと話してくれた。その時のお客さんは今では週に2回はきてくれる常連さんになった。
夜の営業が終わってからキッチンのスタッフが何かメモを書いていた。声をかけると、明日のお通しで出す小鉢が何なのか簡単な説明を書いてくれているという。
キッチン担当としてお客さんに直接説明できなくても、何なのか説明が添えてあったら喜んでくれるんじゃないかと言っていた。
必死に堪えたけれどその心遣いに泣きそうになった。
1週間が経ってみて一番の変化は、スタッフが自分たちで工夫を始めたことだった。
こんな事をいうと怒られるかもしれないが、スタッフは自分の指示通りに動いてくれればそれでいいと思っていた。自発的に動くなんてないだろうと。
それがどうしたことか、まだ人数は少ないものの、夜の営業にも活気が出て自分でもプライベートで行きたいと思えるような、気遣いや思いやりに溢れる素敵なお店に変わろうとしていた。
どうやったらお客さん喜んでくれるかな?
もちろん頭の中では知っていた言葉だったが、普通のことを当たり前にやるだけで、こんなにもお店というものは変わるのかとただ驚くばかりだった。
2週目:ランチ営業をする
2週目は、ランチ営業を始めましょうか。
2週目の「普通のこと」はランチ営業だった。
たしかに、黒もふもふの店ではランチ営業はやっていない。無理に昼間おきて800円の定食を20個売るよりも、夜の営業時間を2時間長くした方が売り上げが伸びると思っていた。
しかし、にゃんこ先生との約束なので早速翌日からランチ営業に取り掛かった。
喜んでくれるかな?という精神で考えると、ランチを食べる人はどうやったら喜んでくれるのか。
まずは、お水をトウモロコシのひげ茶に変えることにした。1日100円か200円しかかからないけれど、暑くなってきたランチでひげ茶は最高だ。それに、麦茶と違って使っているお店が少ないから珍しさも喜んでもらえるだろう。
あとは、すぐに出せるものでメニューを作った。平均で3分で出せるように半調理済みにしたり、盛り付けるだけのメニューにした。
炉端焼きの焼き魚を売りにしているお店だったが、生の状態から焼くと20分ぐらい提供まで待たせてしまう。ランチでの20分待ちは喜んでくれない。
結果として、8割まで半ナマで焼いておいて休ませ、注文が入ってから仕上げるという方法になった。
これならジューシーでパリッとした炭火の良さも味わえる。
ただし、準備の都合上売り切れを許容することにした。魚が売り切れた場合には他のメニューで我慢してもらおう。
ごはんに、焼き魚などメインの料理、ミニミニ冷奴、漬物、味噌汁、値段は魚の値段に応じて800円から1500円と高めに設定し、日替わりで1つの魚定食を100円引きにすることにした。
また、夜使えるビール半額券もランチの注文時にコーン茶と一緒に渡すことにした。お会計の時だとお客さんは急ぎ足で早く済ませたい様子だから先に渡してしまおうと。
ご飯はおかわり1回まで無料にした。炭水化物を控える方向けに、ご飯を無しにすると冷奴が巨大になる無料オプションも用意した。
ランチは大好評だった。夜の営業では考えられないほどお客さんが入り待たせてしまっていたが、提供スピードを3分で回していたために回転も早かった。
女性の方が冷たいコーン茶を飲まなかった事を見ていたスタッフの女の子から、コーン茶は冷温選べるようにする提案があった。驚くことに、女性は暑い日でも温かいお茶を頼む人が多かった。ピーク時間が過ぎた頃には、食事が終わるタイミングを見計らって温かいコーン茶を新しく置くことにした。
私を含めたスタッフ全員で、ゲームをしているような感覚があった。
誰がお客さんに喜んでもらえるか競争して、あれこれお客さんが困っていないか気を配る。見つけた瞬間に対応して、次のお客さん以降に同じアイデアが使えないか考える。
2週目のランチ営業も大盛況だったけれど、一番驚いたのはランチを食べた人が夜の営業に来てくれたことだった。飲食業界では、ランチ営業と夜営業は客層が異なるから、ランチをやっても夜の営業には繋がらないというのは常識だった。
けれども、こうして夜にまた来店してくれる。
自分がこれまでネットや本で調べてきた飲食店運営の常識はなんだったのだろうか。
3週目:売る経路を増やす
普通のことをやるのも捨てたもんじゃなんじゃろう?
3週目は、売る経路を増やすこと。今は来店売上に100%依存しているはずだから、持ち帰りとか色々工夫して増やしてみ?
あまりにも変化したこの2週間で、黒もふもふはすっかりとにゃんこ先生に心奪われていた。
先生の課題をこなすのはお店が盛り上がるのもそうだけれど、自分のお店が向かっている方向が間違っていないことからくる安心感が心地よかった。
けれども、にゃんこ先生の課題はどれも聞いたことがあるような普通の事ばかりだった。
今回の3週目の「普通のこと」もいわゆる販路を増やせというやつで。
半信半疑に疑いながらも、まずはパソコンで調べながら飲食店が来店以外で売上を上げる方法を書き出すことにした。
・来店
・来店時のお土産
・サブスク会員
・フードデリバリー
・出前
・テイクアウトお弁当
・ケータリング
・出張シェフ
・レシピ提供
・通販
・店舗への業販
・オンラインサロンなど会員組織
書き出すと止まらない、うちのお店は来店での売上が100%だったのだが、こんなにたくさんあったのか。。
今回は1週間ということと、今いるスタッフの数を増やさずにできることということで、
・おみや
・テイクアウト
・出前
・ケータリング
この4つを試してみることにした。
共通して言えることは、作ってから食べるまでに時間が空くこと。
くろもふもふのお店ローストフィッシュは、炉端焼きの焼き魚をメインとしているので本当は焼きたてが美味しい。けれどもなんとかそれを工夫していくしかない。
さっそく黒もふもふのお店近くで持ち帰りメニューがあるお店のメニューを片っ端からテイクアウトして、スタッフみんなで食べながら研究することにした。
こうやってわいわいみんなで新しいことにチャレンジするのは楽しい。
しかも、お客さんよろこんでくれるかな?という考え方はもう息を吸うようにみんな馴染んでいるし、ランチ営業で焼き魚の時短など多少の問題をクリアして小さな成功体験から自信が付いていた。
「これ美味しいです!炭火焼親子重。鳥もも肉をたれに漬け込んで炭火で焼いたものに、中が半熟の煮卵と錦糸卵。卵とじと違って汁気がないから時間が経っても美味しく食べられるし、箱を開けた時に炭火の香り、煮卵を割った時の、黄身がゆっくり流れてくる感じ、見た目、箱の素材感も、全部好きです。」
なるほど一口もらったがよくできている。
これを魚でどう表現するのか。
「あの、焼き魚のお弁当じゃなきゃだめなんですか?」
スタッフの女の子がポツリと言い出した。
「わたし、ランチはサンドイッチとかパンや野菜が好きで、ご飯とおかずみたいなものってあんまり選ばないんですよね。例えばサバサンドとか、炉端焼きの野菜で作った焼き野菜サラダとか、焼き魚じゃなくてもいいのかなって。」
そうか、言われてみればそうだな。
とはいえファミレスみたいになんでも出せばいいってものでもない。
そうと決まれば、お店の夜のメニューなんて炭火焼きでフルコースができそうなほど料理が揃っている。その中から時間が経っても美味しいもので、選べばいいか。
でも、なんだかもう一つ大事な何かを忘れているような気がして。
若い子たちに任せて街を散歩してみることにした。
夕暮れの街は風が心地よく、お茶屋の前では香ばしいほうじ茶の香りが、焼き鳥屋の前では煙と共にタレの焦げたような匂いが、花屋の前ではなんともいえないフレッシュな香りに癒された。
時間が経つとどうしても味は出来立てよりも落ちてしまう。
けれども、味覚以外でも、見た目、香り、音、食感など五感で楽しめるような工夫をすれば、きっと喜んでもらえる。
店に戻ると若い子たちが集まって撮影会を楽しんでいた。
「てんちょーう!私たち思ったんですけど、エモいものがいいです。美味しいとかよりも、人に自慢したりとか、インスタにあげたりとか、食べててアガるようなものなら味はそこそこ美味しければOK。」
それから本格的にメニュー開発をして、7つのテイクアウトBOXを作った。
ランチのテイクアウトとして店頭で売り、ランチでも夜でも最初にオーダーをとる時に、「7つのテイクアウトボックス」の説明を書いた紙を渡した。来店した方がおみやで持ち帰れるようにして、近くのマンションにはみんなで手分けしてチラシをポスティングした。
出前も好評で、近くのマンションなので自転車で1-2分もすれば届く範囲だ。
オフィスへのケータリングも始めた。
10個以上のオーダーで配達料は無料にしたし、紙パックの小さなお茶をつけたのが大好評だった。
1つ1000円と少し割高な値段設定にした分だけ、チラシの代金や出前の手間などは十分に回収ができそうだった。
夜の来店売り上げが50%、ランチで10-20%、テイクアウト+出前+おみや+ケータリングで30-40%ぐらいの売り上げ比率になった。
4週目:利用目的を増やす
先生の言葉はわたしが何度も聞いたことがあるような「ふつうの」ことなのに、どうしてうちのお店はどんどんよくなってるんですか?
人は焦ると視野が狭くなり一発逆転のノウハウやテクニックを欲しがるけれど、世の中そんなものはない。
普通のことを非凡に頑張る、それが一番強い。
お前さんのお店で、ご飯を食べる以外の人も利用できるように色々やってみるといい。
炉端焼きの焼き魚がウリの居酒屋「ローストフィッシュ」
このお店でご飯を食べる以外に。。。
前回煮詰まった時と同様に、まずは外を散歩してみることにした。
鰻屋を通りかかったがこの店が、うなぎを食べさせてくれる以外に何をしてくれたら自分は嬉しいだろうか。
八百屋を通りかかったがこの店が、野菜を売ってくれる以外に何をしてくれたら自分は嬉しいだろうか。
馴染みの喫茶店に入り、コーヒーをすすって考えた。
飲食店は飲食提供以外に何ができるのか、何か売れるものがあるのか。
顔なじみのマスターが手際よくコーヒーを入れる様を見て少し声をかける。
マスターは細く糸のように垂らしたお湯から目を話さずに、無愛想に答えてくれた。
「コーヒー豆も売ってるしフィルタなど器具も売ってるよ。息子がYoutubeで美味しいコーヒーの入れかたをやってるせいで、月に1回ここで美味しいコーヒーの入れ方も教えてるし。お客さんはコーヒーを飲みにくるってよりも、休憩とか、勉強とか、パソコン開いて仕事したりって人も多くてな、たぶんコーヒーが無くなって水にしても、彼らは来ると思う。」
なるほど。
お店というものは完成品のコーヒーだけじゃなくで、その素材に当たるコーヒー豆だったり、道具を売ったり、スクール形式だったり、よろず相談もやっているものなのだ。それに、勉強や仕事の場所を提供しているという考えは面白い。うちでもできるだろうか。
さっそく店に戻ってスタッフみんなに聞いてみた。
・電源とWi-FIは絶対に必要
・お水やコーヒーなど何か飲み物
・長時間座っても居心地のいい椅子(ある)
・ZOOM会議ができる個室(ある)
・長時間いても1000円ぐらいまで
・ランチと夜営業の合間14:00-18:00ならいいのでは?
・定休日は1日中解放してもいいよね
早速いろいろな意見を出してくれた。
こういうものはやってみないとわからないということで、早速翌日14:00からワークスペースとしての提供をはじめてみた。1時間たっても誰も入って来ない事で気が付いたのだが、よく考えたらいまワークスペースとして使えるということを看板に書かないとわからないではないか。
店内にあった本日のオススメを書く黒板を引っ張り出してきて、今日の日付と14:00-18:00がワークスペースとして使える件、1時間300円で4時間1000円で、電源とWi-Fiと個室も使えると書いてみた。
すると面白いもんで、1人、また1人とお店に吸い込まれてくる。
働く場所が足りないのだろうか?
頃合いをみて話しかけてみると、ちょっと休憩してパソコンを開いて仕事がしたかったという。何か1杯おごるから何かアドバイスしてよ!と言ったらいろんなことを話してくれた。
・お店にいく前に席が空いているか知りたい
・充電はできれば各テーブルに欲しい
・飲み物は別にいらない。水もらえるか持ち込みOKでも。
・せっかくなら昼と夜の営業はどんな感じなのか知りたい
・昼ランチ食べるとワークスペース1時間無料とか、そのまま残って夜飲むとワークスペース利用料無料とか、前後何かサービスあると嬉しい
・定休日が1日使えるなら朝から晩までで使い放題で2000円でランチ付きだったら、たぶんいく。1500円でランチ付きならダッシュでいく。
調べてみると、こうしてワークスペースを提供する以外にも、定休日や深夜など営業していない時間帯にお店ごと貸してしまうということもできるらしい。たしかに、居酒屋を貸し切ってパーティーだったり、最近だとYoutubeなどの撮影ロケ地として料理撮影に使ったりと言われればわかるけれど、世の中には頭がいい人もたくさんいるものだ。
ワークスペースを始めて1週間、これは途轍もない可能性を感じた。
なにしろ、ランチとディナーの間の14:00-18:00なんて1円も生んでいない時間帯だったのだ。もともと3万円売っていた時間帯に4万円売るのはめちゃくちゃ大変だけれど、もともど0円の時間帯なのでやればやるほど黒字だった。
しかも、こちらの固定費は全く変わっていない。中で仕込みをしていたり別作業をしていても全く問題がないし、帰りに昼と夜の営業のメモを渡すことで、相互集客にもなる。もしかしたら、貸切パーティーなどにも繋げられるのではないか。
約束と魔法のノウハウ
こうしてにゃんこ先生と約束した「普通のこと」をやってみる4週間が経過した。
無事に4週間を乗り越えたことで勝負自体は黒もふもふの勝ちだった。
勝負に勝つと、「ものすっごいノウハウ全部無料で教えます」という賭けだったのだが、心がもふもふしていた。
この4週間にゃんこ先生に言われた課題は、4つともありふれた普通のことだった。これまでにお店を作る前にパソコンや書籍には必ず書いてあるような基本のことで、少なくとも知らなかったことは1つもなかった。
けれども、お店は激変した。
まず、夜の売り上げが2割ぐらい増えた。なのに夜営業比率は50%をわずかに切るぐらいになった。居酒屋なのに夜営業以外の方が収益が増えたということだ。ランチ営業も、テイクアウトなど売る経路を増やしたことも、ワークスペースなど利用目的を増やしたことも、全てがうまくいった。
そして、そうやって夜営業以外の接点で繋がったお客さんにメモやフライヤーを渡すことで、何をやっても夜営業の集客につながった。
UberEatsなど出前の代行業者にも申し込みをした。スペースのレンタル業者にも連絡した。ワークスペースのサイトにも登録した。
これだけの、最高の調子のところに、勝負に勝ったからと言ってにゃんこ先生からものすっごいノウハウをもらっても、噛み合わずにまた衰退してしまうのではないか。
もっともっと聞きたいこともあるし、お店の報告もしたいし、それに何もお礼もできてなくて
そんな大げさに考えるな、また4週間前に戻るだけじゃ。
おっとそろそろお迎えが来たようじゃ。
にゃんこ先生!!
にゃんこ先生はまばゆい光と共に天に吸い込まれるようなファンタジーな演出背景と共に黒もふもふと繋いでいたZOOMの退出ボタンを押した。
気まぐれにただで手伝ったってもええやん?
ところで、今日はランチに連れて行ってくれる約束では?
行くで、ローストフィッシュのスモークサーモンサラダがめっちゃうまそうなんよ!!