終わりの始まり
「金曜のご予約キャンセル承りました。いえ、しかたないですよね。また、お願いします。」
渋谷でもつ鍋や『いつかは本気出す』で店長をしているシロネコは、新型コロナウイルスの蔓延による予約キャンセルに頭を悩ませていた。
IT企業を中心に、オフィスに出社しないテレワークという働き方が広がっていて飲食店は壊滅状態だった。もつ鍋やの2月は書き入れ時なのだが、このまま行くと前年同期比10%減、いやもっと売り上げが減ることも予想された。
「オーナー、また予約のキャンセルでした。このままだとヤバいです。」
「わかってるよ。こっちはこっちでなんとか考えるから、現場でもきてくれたお客さんに普段よりも大盛りの接客で歓迎してあげてね。」
オーナーである黒もふもふも頭を悩ませていた。
もしも、シロネコのいうとおり10%以上売り上げが減るのだとしたら、稼ぎどきである2月に利益が出ない可能性がある。
予約がキャンセルになったからといって、翌日の食材や人件費を削ることは難しい。とはいえ、このままではよくないこともわかっている。どうしたら良いものか。
「全社員をテレワークに変えて半月、業績は落ちなかった。」
テレビから聞こえてきた夕方のニュースでは、いち早く新型コロナウイルス対策として数千人を在宅ワークに変えたIT社長のコメントがニュースを騒がせていた。
「もうオフィスいらないよね」
「ZOOMとSlackでいいかな」
「UberEats使いまくり」
「飲み会Slackでいけるんじゃね?」
そんなニュースに反応してか、twitterではもはや新型コロナウイルスの話題ではなく、出社しない働き方であるテレワークの話題で持ちきりだった。
ZOOMとは、離れた人同士がPCやスマホで利用するビデオチャットツールのことで、これで“テレワーク”でも会議ができるらしい。
Slackは、テキストメッセージを送り合うものらしく、ビジネス用のLINEみたいなものだろう。
そしてUberEats。
この3年間、何度もその名前は聞いていたが黒もふもふとしては自身の店では使わないと決めていた。
手数料が30-40%取られるらしく、いい材料を使う自分の店では成り立たないと思っていたし、自分のお店は自分やシロネコに“会いに来る”人も多く、そのおもてなしや接客に誇りを持っていた。
「UberEatsなんかがコレ以上流行ると、うちみたいなお店は迷惑でしかないよなぁ。」
黒もふもふがうな垂れた首を持ち上げてスマホから視線を外し、カウンター内で洗い物をしていたシロネコに同意を求めるような視線を送る。
「うーん。でも、コロナウイルスがいつまで続くかわからないですし、収まったとしても今年はオリンピックもありますし。その“テレワーク?”が続くのであれば、うちもUberEatsやらないとヤバいんじゃないですか?」
「シロネコまでそんなことを。。。」
自分の意見に同調してもらえず少しムッとしながら、左手でマグカップに残った冷めきったコーヒーを一息に喉へ流し込んだ。
「UberEatsねぇ。。」
実は黒もふもふにはにゃんこ先生というUberEatsに詳しい友人がいる。
以前勧められた時には適当に流してしまったが、今後もテレワークが続くのだとしたら、UberEatsは今始めても遅いということはないのかもしれない。
左手で持ったスマホの画面を、右手の中指でトントントンと軽く叩きながら深い息を吐く。
「はぁ。。聞いてみるか。」
潮目
にゃんこ先生は、新型コロナウイルスはただのきっかけに過ぎず、飲食店が大きく変わる潮目であることを肌で感じていた。
彼が関わっている飲食店の売上数値を分析すると、店舗来店売り上げは減少、人件費と採用費は上昇、外注費と家賃は変わらず。
つまり、飲食店周辺の業者が儲かっているだけで、肝心の飲食店だけが苦しんでいる構造になっている。
仮説では、飲食店の来店売り上げ比率は将来的に50%程度となるのが健全であり、これまで来店売り上げに100%依存していた店舗はチェーン店を除き閉店するだろうと。
フードデリバリー、テイクアウト、プレオーダー、DtoC通販、ケータリング、出張提供、知財提供でのコラボ商品、レシピ提供、ギフト商品開発、そのほか、飲食店が来店売り上げ以外で収益を得る方法は実はたくさんある。今後は、これら“非来店売上”でお店全体の売り上げの50%を稼いだ方が健全な経営ができるはずだ。
「時代の変化に合わせて変わるものだけが残るって誰かが言ってた。」
左手でマグカップを持ち上げて冷めたコーヒーを一気に流し込む。
何かタイミングが悪かったらしく、激しくむせてゴホゴホと咳こみながら顔をしかめていると、PCと、充電中のスマホから同時に音がなった。
「にゃんこ先生、UberEatsってどうですか?」
3つの約束
おひさー。UberEats?お店でもユーザーとしても使ってるけど。
うちのお店でもやった方がいいのかなって。例の新型コロナの影響でキャンセルも多くて売り上げもやばくて。
なるほど。UberEatsやるなら手伝ってもいい。その代わり3つ条件がある。
1つめは全てYESということ。個別の小さな部分でYES/NOを判断すると全体としての目的が達成できない。
わかりました。UberEatsに関しては全てYESで。
2つめは、全てのデータを俺に公開すること。UberEatsはデータが全てだから、隠しごとはなし。
3つめは、儲かるかよりも喜んでくれるかを優先すること。
え?でも、売り上げがヤバくてUberEatsをやりたいので利益は…
うーん。例えば黒もふもふが出前でピザを頼む時に、ピザ屋の利益って考える?
いやいやいや。そんなの気にせずに自分の食べたいものを頼みます。
そうだよね。じゃあ、黒もふもふがどうやったら喜んでくれるか考えまくってくれるA店と、どうやったら利益出せるか考えまくってるB店だったら?
そりゃ誰だって利益ばっかり考えてるお店よりも、自分の喜ぶことを考えてくれる店を…
わかりました。利益よりも喜んでくれるかな?を最優先に考えます。
Day1.UberEatsユーザー用アプリの分析
さっそくですが何からやったらいいですか?先ずはUberEatsへ申し込み?
うん。まずはUberEatsに連絡しといて、5店舗出すって。
そうね、だってどうやったら喜んでくれるか?優先するんでしょ?
だったら、自分のお店の周りで、どんな料理が売れていて、どんな料理が評判がいいのか分析するのが先じゃない?
わかりました。UberEatsアプリインストールします。
そうそう、インストールして住所をお店の住所にすればいい。4.5(500+)みたいな数字があるのはわかる?

そう、4.5が評価で500+が評価した人の数。評価した人の数と料理を食べた人の数は比例するから
じゃあ点数が高くて、人数が多い店がどこなのか探せばいいんですね!
そうだ。自分のお店の周りで点数が4.5以上の店と、評価人数が200人以上の店をスクショで全部抜き出してみて。
これが、現在ユーザーを喜ばせているお店リストなのね。ここから順張りと逆張りでお店を作る。
ユーザー評価のいい店は支持されているわけだから、同じことをやるのが順張り。
逆張りは、他のエリアで人気だが自分のエリアにはないもの、を投入するのが逆張り。今売れているものじゃないものを投入するのでリスクはあるけれど、一人勝ちする可能性もある。
おおおおおおおお。UberEatsって難しいんですね。
もう飲食店にもデジタルによる変革の波が来ているんよ。難しくても、こうやって新しいデジタルやカタカナのことを取り組んでいかないと、売り上げが半分になる。
デジタル化による変革のことを、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ぶ。
新型コロナウイルスによるテレワークをきっかけに飲食店のDXが劇的に進み、飲食店間で埋めようのない差が広がっていく。
Day2.何が売れているのか仮設
素直かっw最も人気の料理とか、評価順とかで並べ替えてやるとよろし。
おおっ!なるほど。マック4.6(500+)、ケンタッキー4.5(500+)、モスバーガー4.6(500+)、スタバ4.7(260+),
バーガーキング4.4(500+)、中華料理4.9(500+)、香港料理4.8(233)、中華料理4.8(500+)、ケバブ4.8(500+)、麻辣4.8(500+)、中華料理4.8(500+)
だから、これからUberEatsで提供する料理はこういう傾向のものがいい。店内来店みたいに味が良ければいいわけじゃないんだ。
結構わかりやすいシンプルな料理が選ばれてるんですね。もっと、UberEatsならではのラーメン!とかサラダ専門店!とかコールドプレスジュース!とかが売れてるんだと思ってました。
そうだな。SNSやメディアに出てくる声に惑わされてはいけない。我々が注視するのは人の声じゃなく人の行動だ。
お店へのお問い合わせやアンケートでは人の行動は予測できないんだ。大事なのは誰が何を言ったかではなく、誰がどう動いたか。
でもメディアではUberEatsだとカレーやサラダが売れているみたいな投稿を見たことがありますし、ラーメンやざるそばみたいなものも人気だって。。
うん。物事は立体的で多面的でしかも時間軸もある。だから、昔はそうだったのかもしれないし、他のエリアではそうなのかもしれないし、その投稿をした人はそう思ったのかもしれない。でも、我々が見るのは行動データだけ。人がどう動いたのかに注視する。
わかりました。だったらうちの周辺だと、ハンバーガー系のファストフード、中華料理、ケバブが売れています。
よし、その3つはメモしておこう。他のエリアで売れているけどこのエリアにないものは?
Day3.仮説検証
先生!すごいもの見つけました!UberEatsの教科書!
https://note.com/yang_ping/m/m994f84a4f511
…なぁ黒もふもふ。世の中に読むだけで何かが好転することなどあると思うか?
こんなもの、読んだ直後にやる気になって人生が変わるような期待感が生まれる高揚感しか得られない。
人生に裏わざなんてないんだ。人生を変える唯一の方法は、自分で体験して、そして「行動する」ことだけなんだ。人もねこも。

https://note.com/yang_ping/m/m994f84a4f511
UberEatsの教科書?こんなもの読んでも行動しなければ意味はない。ありもしない未来に期待して気持ちよくなりたいなら、今まで通り店で売り上げが落ちることを愚痴ってろ。
じゃあ早速、このイケると思っている5種類をUberEatsで頼んでみよう。今から店向かうから、注文しといて。
黒もふもふちゃんもお客さんの一人なんだから、自分がたべたいものをてきとーに選べば良いよ。
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OK、じゃあ順番に食べていこう。感じたことは料理ごとにメモしておいてね。
わかりました。こう、そもそもなんですが私が想像していたよりも、容器や梱包が綺麗ですね。

そうだね、お店によってはビニルじゃなく紙袋にしたり、容器も今はやりのエコなものに変えたり、工夫している。
コンビニみたいな薄いプラスティックよりも、持っていてなんだか嬉しいです、虚しくならない。
そう、そういう細かい部分って喜んでくれるかなって想像できるかどうかだよね。

おいしいです!でも、こう…だいたい想像通りの美味しさです。ファストフードも中華も。感動して友達に教えたりするほどじゃないというか。
そうだよね。あまりのうまさにTwitterで投稿したりするものじゃない。UberEatsで人気なのはめちゃくちゃ美味しいものじゃないということ。
うーん。手軽さとか、早く来るとか、安いとか、ファストフードのエッセンスが詰まっていますね。
さて、食べ終わったところでもともと考えていた5つの業態はどう?
イケると思います。というか、正確にいうとよくわらないのでこのまま進めて修正していきたいです。
Day4.5つの業態と5つのメインメニュー
さあ今日もUberEatsの準備をはじめよう。今日は5つの業態をきっちりと決めるところまで。
UberEatsに5店舗出すんですね!わかりました。
ファストフード、中華、ケバブ、おかゆ・雑炊系、ダイエット系、の5つです。
うん、問題ない。あとは現実的に今やっているお店のリソースを考えた時に、余計な材料を仕入れるとか、経費が増えるようなことは避けたいのね。
ハンバーガー+ポテト+ドリンク、という感じだよね。ハンバーガーじゃなくても良いけど。
ハンバーガー良いですね!一度凝った美味しいものを作ってみたいと思ってたんです!!

だから、新しく作らなくて良いってば。お店でハンバーグとか出してるの?
頼んだ人が喜んでくれるかな?だけ意識すれば良いとは言ったけれど、お店にあるリソースを活用しよう。
おおー良いじゃん。ただ人気のファストフードでサンドイッチなかったよね。
そうね、中身をお店でも使っているものに変えたバーガー店にしよう。月見コロッケバーガーとか、タルタルエビバーガーとかでも。
その上で、バンズを焼くとかソースとか、めちゃくちゃ喜んでもらえるようにしたら良い。
うち、お店でフライドポテト4種類でポテトソースも4種類あります!
いいね!採用。あとは飲み物だけど、これは容器だけ買っておけば他店舗と同じようなものでOK。
1店舗め:ポテトがうまい手作りハンバーガー屋
えっと、餃子、チャーハン、唐揚げ、麻婆豆腐、天津飯、結構定番メニューですね

本格的な中国料理というよりも、餃子の王将みたいなわかりやすい街中華かな。
うちのお店唐揚げめちゃくちゃ人気ありますよ!麻婆豆腐と天津飯も作れます。チャーハンはお店のメニューにはないですが、すぐ作れます。現時点でないのは餃子だけですね。
餃子作るのって結構大変なんだよね。美味しいお店の冷凍餃子を仕入れようか。
2店舗め:唐揚げが美味しい街中華
本当に?おれケバブ街中で見つけても食べないしUberEatsでも頼まないけどな。。
ケバブシェフ4.7(479)、ケバブボックス4.5(303)、良い感じみたいです
まあうまいし、手軽だし、ハンバーガーみたいなもんでしょね
じゃあポテトやドリンクはハンバーガーと同じようにセット作れるね。ケバブってどんなやつだっけ?
薄いパンみたいなやつに、回転しながらBBQっぽくやいた肉を削ぎ落として野菜と一緒にサンド
その肉は手間かかるから無しとして、BBQサンドみたいなもので何かうまそうなものない?
シェフって映画見ました?フードトラックでアメリカ中を回りながらチーズやローストポークを挟んだバゲットサンドを両面バターで押し付けながら焼い…
画像は公式サイトのスクリーンショット chef-movie.jp
じゃあケバブの代わりに、セットで頼めるファストフード的なキューバサンドを
3店舗め:両面をプレスしながらバターで焼いたチーズとローストポークのキューバサンド
ここからは逆張りで、他のエリアではお茶漬けやおかゆが人気なんですが、うちの店の近くにはありませんでした。
ほー。じゃあやる価値があるね、どっちの方が喜んでくれそう?
そうですね、朝食べるならおかゆかな。または、前日食べ過ぎちゃった時のランチでもヘルシーなおかゆは嬉しいです。
女子かw今回はお店の固定を変えずに、経費を増やさずにやりたいのね。今って朝とか昼間営業してるんだっけ?
そうだよねwだったら朝とか昼の話してもしょうがない。
夜だったら豪華なお茶漬けがいいです!どうせUberEatsなら豪華に海鮮とか入れたい。

おけ決まり。ちなみに、普段お店の締めご飯って何かあるの?
ごはんものだと、卵かけご飯とか食べる人いますね。うち、卵もすっごい良い卵使ってて。黄身がオレンジ色の。
卵かけご飯もいいね、じゃあ豪華海鮮のお茶漬け屋にしつつ、オプションで豪華海鮮の卵かけご飯も出そう
4店舗め:海鮮お茶漬け&海鮮卵かけご飯専門店
はい。5コめです。こちらも逆張りでヘルシーダイエット系です。でも、ジュースとかスムージとかはどこもイマイチで、サラダ専門店も人気の店は少なかったです。美味しいもの食べたいけれど太りたくないみたいな。
鶏胸肉とブロッコリーのお店とかめっちゃ流行ってるらしいですね。
なるほど。低糖質系か、たしかに、UberEatsもご飯とかパスタとかパンとかで、低糖質の専門店はあんまりないね。
そうなんです。でもうちが営業するのは夜ご飯なので、あんまりしょぼいメニューも出しづらく。
喜んでもらいたいよね。箱開けた瞬間、低糖質なのにめっちゃ美味しそう!!ってテンション上がるようなもの。
Meat、Egg、Cheeseの頭文字をとってMECです。肉と卵とチーズの3種類をよく噛んで食べるというダイエット方法で、見ての通り低糖質で。

おおーいいね!お店で普段使っているものでどうにかなりそう?
はい。うちのお店もつ鍋屋なので肉類は牛豚鶏豊富に取り揃えてますし、さっきの唐揚げが人気といった鶏もめちゃくちゃうまいです。胸肉の低温調理とか、モモ肉のローストとかに、ゆで卵やオムレツを足して、さらにチーズですよね?それに少量の野菜で彩りを取れば。
5店舗め:もつ鍋やが作るジューシーな鶏肉とMEC食
Day5.UberEatsへ連絡(2回目)
UberEatsから連絡来ました!まずはメニューとか埋めてエクセルファイル送り直せって
おけおけ。じゃあ5店舗分埋めて送りかえそう。ちなみに1店舗追加でもつ鍋やも入れとこうか。

時間はかかると思うけれど、掲載は無料だし、一度来たことがある人が知っている店舗載ってたらうれしいやん。
あー。。UberEatsのもつ鍋って結構普通よ?おれも何度か頼んだことある。

このあとの流れなんだけど、申し込みして、初期費用は毎週売り上げから自動で引かれるのでお金は用意しなくてOK、メニュー出したら1週間ぐらいで写真撮影の予約になるからそこで予約して、写真撮影に来てもらって、その写真が登録されて、スタート日を決める感じ。
そう?そう思ってくれたらよかったわー。じゃあ5店舗+もつ鍋やで6店舗分、15種類以上ずつメニュー考えて提出してね
UberEats内で上位に表示された方が売り上げあがるやん?
どうやったらUberEats内で上位に表示されるかわかる?
難しい話は省略するんだけど、UberEats側が公式に説明しているものがあってね。こうすれば上位に出すよって。
え?ずるい!みんなじゃあそのルールに従うんじゃないですか?
それがね、知名度ないの。たぶんUberEats側もわざとアピールしてないんだと思う。
グリーンスタンダードという指標があってね、その中の1評価項目にメニューを15種類以上登録することというのがあってね。
グリーンスタンダード
1. オンライン率 : アプリで設定した営業時間に対して実際にオンラインだった時間の割合
2. メニュー : アプリに表示されているメニュー数
3. 写真: 写真があるメニューの割合・数
4. 商品説明 : 商品説明があるメニューの割合
5. 受注率 : アプリで入った注文に対して、実際に受注した割合
6. キャンセル率 : 全ての注文に対してレストランによるキャンセルの割合
だから事前に15種類ずつメニューを決めて、15種類とも写真を撮ってもらった方がいいよと。
ちなみに15種類は単品やセットメニューなど、メインのメニューで埋めてね。烏龍茶で1とかはだめ。
1店舗め:ポテトがうまい手作りハンバーガー屋
1.月見コロッケバーガー
2.タルタル海老カツバーガー
3.リブロースステーキバーガー
4,ガーリックチキンソテーバーガー
5.ガーリックシュリンプバーガー
6.ローストポークバーガー
7.ポテトフライA
8.ポテトフライB
9.ポテトフライC
10.ポテトフライD
11.オニオンフライ
12.唐揚げA
13.唐揚げB
14.ミックスフライ
15.パーティー用オードブル
Day6.試作と容器検討と写真撮影
はい。考えに考えて、人気店舗のセットメニューとかも参考に。。
90個のメニューを考えるのは大変でした。でも、喜んでくれるかな?って何百回想像したことか。自分ならどっち食べたいかとか。こう、お店の売り上げが下がるから代わりに儲けなきゃっていう気持ちが、どうせやるなら喜んで欲しいなって気持ちに変わってきました。
いい感じですな。今日は写真撮影に向けて試作と容器検討です。
そう、たぶん一番時間がかかると思う。何しろ15メニュー*6店舗=90メニューの味を決めて試行錯誤して盛り付けを決めるわけだから
では、ポテトがうまい手作りハンバーガー屋からいきます。
1.月見コロッケバーガー
2.タルタル海老カツバーガー
3.リブロースステーキバーガー
4,ガーリックチキンソテーバーガー
5.ガーリックシュリンプバーガー
6.ローストポークバーガー
7.ポテトフライA
8.ポテトフライB
9.ポテトフライC
10.ポテトフライD
11.オニオンフライ
12.唐揚げA
13.唐揚げB
14.ミックスフライ
15.パーティー用オードブル
月見コロッケうまいねーこの卵どうやって作ってんの?
丸い金型をフライパンに乗せて、卵割るだけで放置です
おお、じゃあ他のバーガーにもオプションで月見追加できるようにしよう
そうだね、UberEatsはお店では恥ずかしくて頼めないようなトッピングフル盛りみたいなメニューもたくさん出るから、たくさんあった方がいいと思うよ。
じゃあタルタルとか、サイドメニューとかもなるべく多めに用意します!
そうね。ある店舗ではウズラの卵がトッピングで75個出たりとか。
カレー屋さんでトッピングしまくって3,000円超えることとか普通にある。
ストレス発散とか、今までできなかったことができる、みたいな楽しさもUberEatsの魅力の一つだから、喜んでくれそうなことはどんどん取り入れよう。
たしかに、中華丼のうずらって1つじゃないですか。あれ10個とか入れてみたい。
じゃあ、具が二倍とかどうですか?コロッケだったらコロッケ2倍!
具が2倍になること自体に特許とかないだろうから、お客さんが喜んでくれそうなことはどんどん模倣して問題ない。敬意とか配慮は必要だけど。
はい。じゃあうちは月見コロッケバーガーに海老カツ追加とか、具も全部何種類でもトッピングできるようにします!
いいねー!!誰かの誕生日とかに海老カツバーガー、海老カツ+9個トッピングとか、楽しいよね!
はい。美味しく食べられる範囲で、喜んでもらえそうな仕組みどんどん入れていきます
基本のセットはハンバーガー+ポテト+ドリンクで、ポテトもドリンクも選べる感じに。
OK、UberEatsの仕組みだとそうやって選ぶやつが+50円でドリンクLサイズとかも選べるようになってる。
良いですねー。じゃあポテトもSサイズを標準にして、Lに変更、メガ変更、ギガ変更、など入れておきます。ポテトが4種類。あと、サイドメニューでオニオンフライと唐揚げがあります。
そういうのも追加で入れられるようにしよう。ちなみにお店にレタスって普段置いてる?
だったら、ハンバーガーのパンをレタスに変更できるやつやろうよ。低糖質選びたい人結構いるんだけど、パン2種類はさすがに置けないから。
良いですね!リブロースステーキバーガーのバンズレタス変更とか、想像しただけでもう。でも、パンに比べてレタス高いんですよね。同じ原価にするなら2-3枚しか使えないのでソース溢れて手が汚れるかもしれません。
値段あげて良いよ。喜んでくれるかな?を最優先にはするけれど、適切な利益を出さないとお店は継続できないから、最終的にお店が潰れたらお客さんは喜んでくれない。だから、値段だけはどんどんあげて良い。
そうですか?でもあんまり高いと、喜んでくれるかな?と逆で悲しくなりませんか?
んとね、UberEats使ってるって時点であんまり節約志向とかない人たちなのよ。だから、無料でパンがレタスに変更できるって場合に、レタス2-3枚で手がベットベトになるよりも、レタス変更は+200円でフル盛りの方が喜んでくれる。
そもそもUberEatsのファストフードのハンバーガーってなんとなく高い気はしない?ググって同じ商品の値段比較してみ?
はい、えっと有名ハンバーガー屋の同じセットで、、、あ。ぴったり1.5倍になってます!
そう。値段が高くなるからできないということと、値段が上がりますができますということは、全然違うの。値段はあげて良い。値段をあげる代わりに願いを叶えて喜んでもらえば良い。いままでできなかったことができるようになって、喜んでもらおう。そのかわり安売り戦争はなし。
わかりました!なしは無し、でとにかく喜んでもらえるように考えます!
2店舗め:唐揚げが美味しい街中華
・チャーハンが時間かかるためあらかじめ5食分のネギとチャーシューとナルトを刻んでおく
・餃子はXXの冷凍餃子を仕入れて、完璧な焼き具合で提供、揚げ餃子もOK、冷凍餃子のままの販売もOK
・天津飯は甘酢餡と、だし醤油餡が選べるように。ご飯はチャーハンにも変更できる
・唐揚げは塩、タレの2種を基本に。全メニューに1つずつからトッピング可能
・麻婆豆腐は、時短のために5食分ずつソースを合わせておく。
・麻婆丼も、ご飯がチャーハンに変更できる
・天津飯用のふわふわ卵も、天津卵焼きとして単品での注文や、他注文のトッピングに。
・唐揚げ餃子定食だけはご飯の大盛りが無料
3店舗め:両面をプレスしながらバターで焼いたチーズとローストポークのキューバサンド
・パンは普段お店で利用しているバゲットを使用、余ってもロスなく利用できる
・ローストポークは自家製でまとめて作り、お店のメニューにも加える
・チーズは普段お店でも使っているとろけるチーズを使用
・基本のレシピはバゲットにバターを塗ってローストポークとチーズを挟み、バターを溶かしたフライパンで両面をプレスしてチーズを溶かす
・プレスをどうするか検討した結果、鶏モモ肉のディアボラで使う鉄製の重しで代用することに。不思議なことに、プレス強めの潰れた感じがとてもうまい
・キューバサンドも、ポテトやドリンクのセットで用意する
画像は公式サイトのスクリーンショット chef-movie.jp
4店舗め:海鮮お茶漬け&海鮮卵かけご飯専門店
・ご飯はお店で利用しているものを共用で冷水に晒さないほかほかご飯を使用
・お茶漬けの出汁は、もつ鍋で使用しているスープを薄めて粉末の抹茶を小さじ1杯加えたもの
・出汁は味噌汁用の容器で別々にお届け。
・海鮮の具を変えてオススメの組み合わせでメニューに載せつつ、好きなものを好きなだけトッピングできるように。
・お茶漬けは全て、お茶の代わりに卵を選んで濃厚卵かけご飯にすることができる。
・海苔やワサビやあられなどは増量可能
5店舗め:もつ鍋やが作るジューシーな鶏肉とMEC食
・肉は牛豚鶏の3種類から選べてそれぞれを基本メニューに。値段は変える。
・お店で出しているメニューと内容を合わせて、メインの肉+ゆで卵1個+日替わりのチーズ
・肉も、卵も、チーズも、増減可能で肉2種類メニュー、肉3種類メニューも用意
・糖質を抑えめにしたいので、ソースは極力シンプルで甘くないものを。店舗で普段利用しているソースやドレッシングで合うものをチョイス
・卵はゆで卵以外に、天津卵や月見もチョイス可
・本当はダメとわかっていながらも、サイドメニューにポテトフライと唐揚げも用意
6店舗め:もつ鍋や
・基本的にお店の人気メニューを提供する
・もつなべは火を通す前の状態で食材を真空パックで提供、鍋は大きめのアルミ鍋
・作り方を書いた紙を1枚同封し、受け取った人に自分で温めてもらう
・無料オプションで、完成品のお届けも可能。ただし、味が落ちることは明記する。
・締めのご飯や麺なども含めて、喜んでくれるメニューを用意
・ショップカードサイズで、来店時にお通しに唐揚げが1つ無料で付いてくるチケットも同封。
容器はなるべく全店舗共通で利用できるものにして、素材も再利用できるようなエコ・エシカルなものをネットで購入。包装用のビニル袋は安いが、ブランドイメージを崩したくないということで全て自然な茶色で無地の手提げ付き紙袋に。
Day7.運用スタート
いよいよオープンの日を迎えた。
3週間前まではUberEatsについて何も知らなかったが、この3週間お店の営業と並行して本当に真摯に向き合ってきた。今日は17:00から6店舗をオープンさせるように手配している。
そうですね、でも早く試したいという気持ちの方が大きいです
今日の目標は、お客さんに喜んでもらうこと。儲けることじゃない。
注文が入るとタブレットが鳴り出すから、画面を指でタップして音を止める。タップすると自動的に受注になる。今日は、混乱を避けるために受注は全て俺が受け付ける。受注が入ったら、付箋にオーダーと注文番号を書いてキッチンに通す。

キッチンはその付箋=店内ではなくUberEatsだと判断して、調理してテイクアウト容器に詰める。
そう。シェフは出来上がったらその容器に付箋を貼り戻して提供カウンターへ置く。配達員の遅延や先着で着いた方の対応は俺がやる。
我慢せずに、混み合ってきたタイミングで声をかけてほしい。料理の完成時間を遅らせることができるから、その分配達員が取りに来るのを遅らせることができる。また、受注をSTOPすることもできるから、例えば欠品とか注文が溜まっている時には、やはり声をかけてほしい。

さあ、そろそろ17:00だ。もう一度確認。お店の利益とお客さんの喜びがぶつかった場合、今日はお客さんが喜んでくれる方をとる。
終わりの始まりの、終わり
UberEatsで6店舗を出してからというもの、黒もふもふがオーナーのもつ鍋や『いつかは本気出す』は180度変わった。
まず、来店売り上げに依存しなくなった。前まではお店の売り上げが悪いとそれが全てだったが、今はお店の売り上げが悪い日はUberEatsが頑張ってくれて、UberEatsの売り上げが悪い日は店舗の営業が頑張ってくれている。
考えてみると、私たちの胃袋は1つで1日2回か3回ご飯を食べるようにできている。お店が暇な時や予約がドタキャンされた時も、その人が絶食しているわけではなくどこかで何かを食べているのだ。今までと変わったことは、そのお客さんとの接点が店舗しかなかったところが、UberEatsというデリバリーサービスにも接点ができたということ。

そう考えると、誰もが飲みたい陽気な日にはお店の売り上げが上がってUberEatsの売り上げが減り、誰もが帰りたい状況の日は、店舗の代わりにUberEatsの売り上げが上がることも、至極当然のことだった。
UberEatsを初めて、売り上げ以外にもたくさんのいい波及効果があった。
1、近所に住む常連のお客さんが、UberEatsで注文できるようになって喜んでくれていること。
2、店内のお客さんが、色々なメニューを“おみや”としてお持ち帰りできて喜んでもらえていること。
3、UberEatsとは別で、デリバリーアプリやテイクアウトアプリなどへの参加お誘いが理解できるようになったこと。実際に、UberEats以外に2つのサービスに加盟したことで、テイクアウトのお客さんも増えた。近所のコンビニの売り上げは下がったのかもしれない(笑)
4、食べた人のフィードバックが得られるようになった。これまでは店内でどうか聞いてもみんな批判はしてくれなかったが、UberEatsのシステムではシビアに点数やお叱りの声が届く。開始して2週間経ったころにおきた“髪の毛混入事件”では、これまで築き上げてきた自信を完全に打ち砕かれた。しかし一方で、絶対に異物か混入しないだけの新しいマニュアルを整備し、進化できている。
5、食材の回転が早くなった。現在お店で出すメニューとUberEatsで出すメニューの食材は9割が同じものが利用できている。そのため、UberEats専用に仕入れるということがなくロスも生まれない。その上回転が早くなったため、お店のお客さんにもUberEatsのお客さんにも新鮮な食材で作った料理が提供できている。
6、スタッフが生き生きとしている
UrbEatsの分だけ厨房もホールも以前より忙しくなった。しかし、人を増やしたわけではないので、スタッフの暇な時間が減っているということだが、みんなどうしたことか生き生きとしている。話を聞いてみると、私が暗い顔していたことや、誰の目にもわかるほどキャンセルが続いていた頃は気持ちが沈んでいたというのだ。
1店舗1万円ほど売れているので毎日の売り上げは6万円上がった。月にして180万、お店に着金するのは110万円ほど。食材費を抜いて50万円前後がお店の利益として残った。人件費も家賃も何も増えていない。どうして私はこれまでUberEatsをやらなかったのだろうか。願わくば3年前からやりたかった。。
あとがき
この記事は、テレワーク・テクノロジーズという働き方をデジタルで変革するプロジェクトを進めるうちに、テレワークだと昼も夜もご飯が困りUberEatsをみんな普段よりも多く使っているという調査結果と、通勤がなくなることにより、飲食店が壊滅的なダメージを受けるということを知り、何か自分にできることが無いかと考えたことがきっかけで書くことになりました。
普段記事を書く時にはスマホで1〜2分で読める記事として1,000文字程度を目安にしているのですが、15,000文字と大変読みづらい記事となってしまったことはお詫び申し上げます。
この記事は、飲食店を運営する全ての方に読んで頂きたいと思って書きました。新型コロナウイルスは一時的なものですし、UberEatsもエリアが決まっているために、「自分は関係ない」と思っている経営者も多いと思います。しかし、そうじゃありません。コロナウイルスはただの引き金であり、本質としては飲食店のビジネスモデルが変わりつつある歴史的なタイミングに私たちは立ち会っています。
デジタル化のことをデジタリゼーションと呼び、飲食店運営も予約や決済やバイトなどたくさんのものがデジタリゼーションの波に乗ってきましたが、UberEatsは単なるデジタル化だけでありません。それは、革命なのです。今までは、外食するか自宅で食べるか、飲食店は外食のお客さんからしか売り上げをあげることができませんでした。しかし、UberEatsがあれば自宅でご飯を食べることを選んだお客さんからも売り上げをあげることができるのです。
本記事はフィクションではありますが、こうあって欲しいという願いでもあります。
1店舗でも多くの飲食店が、今回の新型コロナウイルスを期に、デジタルトランスフォーメーションというデジタル改革を意識されますことを願います。そして、東京オリンピックを機に社会におけるテレワークという流れはさらに進んでいきますので、賛否どちらでも何かを考えるきっかけとなりましたら大変嬉しく思います。何かを始める時に、遅すぎるなんてことはないのではないでしょうか?
また、15,000文字を超えて省略した内容も多々あります。本当はもう少し詳しく書きたかったのですが本当に本になってしまいますので、UberEatsを本当に導入して売り上げをあげていきたいという方は、こちらのメルマガもご活用ください。
最後に、勝手に名前を出した『UberEats』の皆様に、心よりお詫びと黙認を願います。どうしてもUberEatsの名称を出して欲しくないということでしたら文中のUberEatsを全て置換しますので、お声がけいただけましたら幸いです。
これを読んでUberEatsを始めたいと思った人間よ、あいにくわたしの時間は限られていて、黒もふもふのようにつきっきりでアドバイスするのは難しいのじゃ。
https://note.com/yang_ping/m/m994f84a4f511
これはUberEatsの教科書?でもこんなもの読んでも意味がないって、おこ…
本当はUberEatsを始めた「後」の方が重要なんじゃが、予算の都合上半日しか記事執筆に時間が使えないため、残りはUberEatsの教科書の方で連載していく。
読んだだけで売り上げは変わらない。でも、読んで行動したら人生は変わるかもしれない。わい、にゃんこやから知らんけど。
リンク集:
※UberEats店舗加盟画面:https://restaurants.ubereats.com/jp/ja/
※テレワークテクノロジーズ:https://telewor.com
※もしかして俺もやれんじゃね?と思ってしまった素人の方はこちらから間借り物件をどうぞ
※にゃんこ先生監修UberEats非公式、運営の教科書有料マガジン:https://note.com/yang_ping/
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※本記事へのお問合せ:araki[at]4jigen.space [at]を@に変えてご送信を

記事を書いた人: にゃんこ先生
外食産業のデジタルトランスフォーメーションに詳しい専門家。フードデリバリー、ゴーストレストラン、クラウドキッチンについて、自らもゴーストレストランを運営するなど、業界の中から実際に体験した情報を発信。ねこ好きの犬派。
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